泡隠れのくノ一



 綱手が千賀と出会ったのは、テロ集団「霞」が木の葉の里を襲撃した半年前のことだった。

 傷だらけのくノ一が木の葉の里に逃げ込んできた。
 千賀と名乗り、泡隠れの里の下忍で、里が謎のテロ集団「霞」に衝撃され全滅したとのことだった。
 綱手は早速、一小隊を派遣して調査した結果、千賀の言うとおり泡隠れの里は全滅していた。
 これは暁の再来と木の葉の里の幹部は色めき立ったが、外の忍び五大国に情報提供を求めても霞に関する情報は得られなかった。

 千賀は霞に復讐したいので、自分を下忍として木の葉の忍びとして雇ってほしいと綱手に直訴した。
 霞の詳細がわからないものの、一つの里を全滅させるくらいのテロ集団に、くノ一一人で立ち向かえない。
 綱手は肉親を殺された千賀の気持ちが痛いほどよくわかったので悩んだ。
 当然、よその里の忍者を簡単に受け入れることはできない。スパイである可能性があるからだ。
 木の葉の幹部の間では、千賀を胡散臭いと毛嫌いし、反対した。
 しかし、不憫に思った綱手は周りの反対を押し切って、千賀を自分の雑用担当として雇うことにした。
 千賀は綱手やシズネの雑用を文句ひとつ言わずにこなした。
 年は離れているが、綱手は自分の妹のように可愛がったため、千賀は綱手のところに入り浸るようになった。
 しかし、それから3か月くらい経つと千賀の不可思議な行動が綱手の耳にも入ってきた。

・夜な夜な男と飲み歩いて、いろいろ木ノ葉の里や綱手のことを嗅ぎまわっている。
・警護担当の幹部一夜を過ごしたところを見かけた。
・武器を保存している場所を探っていた。
・綱手が不在の時に火影の執務室に入り込みいろいろ書類を漁っていた。

 しかし、綱手は気にしなかった。
「千賀は、もう我々の仲間なのだから、変な噂を流すな」
 千賀の噂話をしていると、綱手はその忍びを叱った。

 里のご意見番のホムラやコハルもどこから情報を仕入れてきたか、綱手に忠告してきた。
「霞は存在するのか? 千賀の自作自演ではないのか?」
 綱手は呆れた顔をした。
「綱手、早くあいつを摘まみだせ。このままだと噂がどんどん独り歩きして面倒なことになるぞ」
 ホムラが間髪入れずに言った。
「まあ、霞が存在するとして、千賀を匿うことで戦争にならないとは限らない。なんなら暗部に始末させてもいい」
 コハルが続けた。
「何を根拠に言っているだ! 千賀ならば、きちんと私の雑用をこなしている」
 綱手は憮然としてコムラたちに言い返した。
「それに霞への復讐も最近口にしなくなった。霞との争いの火種になる危険性はない」
「それは表向きのことだ。腹の中は何を考えているか、わからん」
「千賀はまだ若いんだし飲みにも行きたいだろう。里の仲間になったんだから、もっと木ノ葉の里のことも知りたいだろうう。それにそれはガセネタだ」
「……わかった。但し執務室で千賀を一人にさせるな。いいな」
 ホムラとコハルの言うことはもっともなことだった。綱手は承諾するしかなかった。
 それにしても綱手の気かがりは、綱手の執務室で何をしていたかということだ。

 そして、ある日忽然と千賀が姿を消した。そして、その2日後にテロ集団霞による木の葉の里襲撃が行われた。
 綱手は非常事態警報を発令し、里の住人の避難を開始した。鉄壁の守りが木の葉の里の自慢だった。
 避難は順調に行われていると思われたがが、警備や避難の情報が霞に漏れていて、秘密の避難所が襲撃されて人質にされてしまった。
 避難所に立てこもっている霞のメンバーの中に千賀がいると言う情報が綱手の元に届いた。
「……千賀の奴……」


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